Only Three Months
「それでもこうして、またこの学校に戻って来たいと思ったのには理由があります。
 好奇心だけで城を抜け出した私を、2か月と少しの間、守ってくれた方がいます。
 きちんとお礼をしなければ気が済まないのです」
「姫様」


…オレは、アリーがどう言おうと犯罪者なんだ。
そのオレに対して、“守ってくれた”とか“お礼”とか、言うべきじゃない。
だから、執事が止めた。

いくら庶民学校とはいえ、公の場でそういうことを言ったのが国王に伝わったら?
アリーは自分で自分の首を絞めてる。
でもきっと、アリーは自分でそのことすらも分かってる。


「…私はこれから、一国の王位継承者として城での生活に戻ります。
 会えなくなる前に、どうしても、伝えたいことがあります」


スピーチの途中で、音楽がかかり始める。
アリーにこれ以上話させないようにするためか。

音楽がかかったことで席に戻ったアリーが、執事に何か言われてる。
内容とか言葉の選択のことだろうな。

執事が台座から降りて、アリーが席を立つ。
ここで初めて、アリーと目が合った。

前に出て、ひざまずいて、のばされた手を取り甲にキス。
アリーを見つめると、涙が溜まってて。
頭をなでてやりたいけど、微笑むにとどめて。

フロアに出てアリーと向き合って、腰を引き寄せて踊り始める。


「…マイク」
「ん」
「私、本当に幸せだった。
 感謝しきれないくらい」


そう言って、アリーは話すのを止めてしまった。
目から、流れてしまうからだろうか。


「待っててよ、迎えに行くから」
「え?」


無責任かもしれない。
オレは確かに隣国の王位継承者だけど、今はもう滅んでるし。

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