Only Three Months
「この写真のころは、まだアルバートはあったってことだよね」
「オレの父親が生きてたから、あったはず」
「15年とかで、国家体制がここまで綺麗に移り変わるもの?」
「オレたちがヴィクトリアで育ったから分からないだけかもな」
「そっか…」


写真を見ながら、エドが言う。
やっぱり、オレたちは知らなさすぎる。


「オレの叔母の用意周到さかもな」
「どうだろうね」
「とりあえず、サーから聞く前に、読んでみたい」


エドが座り直す。
日記の文字が見える位置にきて、覗き込む。


「8月24日…」
「マイクの誕生日だね」


一番古い日記が、そこから始まってた。


“今日、私たちに第一子の元気な男の子が誕生した。
 アルバートの王子だ。
 隣国のヴィクトリア王国でも姫君が誕生したとのこと。
 おめでたいことだ。
 ふたりが仲良くしてくれるといいのだが”


「アリー?」
「そうだろうな。
 誕生日、一緒なんだ…」


政略結婚がこのころから決められていたとしても、幼いころから仲が良ければ抵抗は少ない。
王族だと、生まれた瞬間から結婚を考えないといけないのか。


“私たちの王子はレネに似ていて、きっとアルバートの王子にふさわしい顔立ちとなるだろう。
 成長が楽しみだ”


オレが生まれた当日の日記はこれだけだった。
この前から、叔母さんの計画は始まってたのか?
日記を読んでいくしか、手がかりはない。


“レネが帰らぬ人となってしまった。
 表向きには出産による死だが、実際は毒殺だ。
 気持ちの整理をしたいが、そんな余裕もなく公務に追われた”


「オレが母親に触れてもらえたのって、当日だけだったのか」
「マイク…」


この写真も、生まれた当日に撮ったのか…?
そんなことが可能なのだろうか。
出産したその日に、他国で同日に生まれた姫と?
違和感しかない。
< 89 / 133 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop