Only Three Months
エドを見ると、すごく喜んでて。
オレが選ばれるとか、何かの間違いだろ。


「何をしている、早く前へ出なさい」


教師の声。
ってことは、間違ってないんだ。
教師にオレとエドの区別がつかないことはないから。
服装で注意受けたのに、オレが選ばれるってどうなってるんだよ。

失礼な動作がないように、ゆっくり、慎重に檀上へ。
立っている姫の前で片膝をついて、姫の片手を取り甲にキス。

この学校の紳士教育って、こういうときのためにあったんだな。
実際に役に立つ状況が来るとは思ってもなかった。


「…お選びいただき光栄です」
「短い時間ではありますが、一緒に楽しみましょう。
 音楽をお願いできますか」


姫の片手を取り、ドレスの裾を気にしながら、
ゆっくりと姫をフロアの中央へ案内する。
目を見て、呼吸を合わせて、手の位置を誘導する。
腰に手を回し、身体を揺らしながら、より相手のリズムを掴む。
全て、授業で習った通り。


「…マイクと呼んでもかまわないかしら?」
「お姫様に愛称で呼ばれるほど、光栄なことはありません」


教科書通りの回答をしているはず。
エドにはかなわないけど、学年2位の成績を舐めてもらっては困る。


「マイクは、他の人とは違うのね」


返答に困る、違和感。
初めて一緒に踊ってるオレに、王族が普通の言葉遣い。


「困るのも当然よ。
 わたし、家柄が嫌いで。
 でも立場があるから、公式な場所ではそれなりにきちんとした格好をして。
 きちんとした言葉を遣って。
 家でもお父様と話すときは同じようにしないといけないの。
 でも、いつもそうしてたら窮屈で仕方ないの」


オレの頭がついていけてない。
家柄が嫌いってどういうことだよ。
王族が王族を嫌ってるのか?
オレの知ってる王族じゃない。
てか、それをオレに言ったところでどうなるんだよ。
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