Only Three Months
“今日行われたヴィクトリア王国との合同食事会で、アリシア姫に初めて会って驚いた。
 たくさんの言葉を覚えて、言いたいことを言って。
 思い通りにならないと泣き出す。
 すごく感情豊かだった”


…それを、抑えるようになったのはいつだろう。
いつから、アリーはああなった?


“アリシア姫が頻繁にぐずっても、マイクはおとなしく座っていた。
 語彙の成長に男女差はあるそうだが、何も今からポーカーフェイスで居る必要はない。
 母親がいないからという意見には、賛同しない。
 マイクなら、きっと大丈夫だ”


「小さいころから変わらないね」
「そう?」
「言葉足らずで滅多に泣かない」
「この年になってまで泣くかよ」


一人暮らしの家で、ひとりで泣いたって空しくなるだけだ。
泣きたくても泣けない。

だからって、エドの前で泣けるかって聞かれても、できない。
アリーの前でならできるかもしれない。


“レネの命日だ。
 叔母だと断定できる資料はそろわず、レネの死は闇のままだ。
 諦めたわけではないが、1年経った今、想うことがある。
 レネが亡くなったことよりも、マイクの未来を考える方が有益だ、と”


愛する人を毒殺されて。
その悲しみには浸れず公務に追われて。
自分の姉への捜査をしつつ公務をこなして。

物事が分かる年齢になって、父親を見たかった。
きっと、誇れるから。


“今日のマイクも賢かった。
 いつもは城の中ではしゃぎまわっているマイクが、おとなしかった。
 空を見ているのが多いように感じた。
 何を見ている?と聞いても、ただ広い空を指さすだけだった。
 マイクには、天にいるレネを見ることができたのかもしれない”


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