Only Three Months
日記にしおりを挟んで、部屋を出る。
サーの後ろについて、廊下を進む。
廊下に見覚えがあるかもと思って歩くけど、何も出てこない。

オレとエドの部屋とは逆側の、一番端の部屋。
城の中は広くて、特に用もなかったから、見て回ることしていなかった。
どの部屋のドアも同じだし。


「マイク、ここの部屋を開けてみなさい」


そうオレに言ったサーの顔は、自信に満ちていた。
促されて、ドアを開ける。

水色の壁紙、大きな窓、そして子供用のベット。
それから、なんだか懐かしい雰囲気。

一歩入って、ぐるっと見回してみる。
やっと、この城でオレの記憶を掘り起こすものと出会った。

オレ、この部屋を知ってる、
オレが使ってた部屋だ。


「この部屋のこと、分かるか?」
「はい、見覚えがあります」
「この部屋には、マイクがこの城に暮らしていた3歳までの思い出が詰まっている」


そうなんだろう。
おもちゃとかもそのまま残されている。


「ダンが亡くなって、マイクがここを出てから、誰もここのものには触れなかった。
 触れても、掃除をするくらいで、本当に当時のままだ」


オレの父親が亡くなって、オレが叔母と暮らすようになるまでは、この部屋にいた。
オレの、3歳までの思い出。


「みんなマイクが大好きだったのに、何で掃除しかしてなかったんですか」
「マイクがここにいないことを認めたくなかったんだ」


エドがオレを見てくるから、首を横に振る。
サーの言うことの意味が分からなかったから。


「この部屋に入れば確かにマイクのおもちゃやアルバムはある。
 しかし、実際にマイクと遊ぶことはできない。
 その現実が辛かったんだ」


今まで、アリーとエドは別として、人から好かれていると感じたことはあっただろうか。
ここで生活してたオレは、城中の人たちから大切にされてたんだ。
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