Only Three Months
「しばらく、この部屋のものに触れてみるといい」
「ありがとうございます」
「きっとエドのものも出てくるはずだ。
 ふたりで楽しみなさい」
「はい」


そうか、エドもこの城に住んでたはずなんだ。
オレの父親の執事を、エドの父親がやってたから。


「それから、今日の夕方には、ダンとレネに会いに行こう。
 きちんと報告しないとな」
「…はい」


両親の墓には行ったことがない。
正確には、行った記憶がない。
叔母と住むようになる前には、行ったことがあるかもしれないけど。

サーが部屋から出て、オレとエドだけになった。
綺麗に掃除されている部屋を改めて見渡す。
一歩を踏み出す勇気が出ない。


「…ここ、マイクの部屋だったんだ」
「ああ、見覚えがある」
「オレも出ようか?」
「いや」
「分かった」


きっと、エドがいた方がいい。
エドの父親がオレの父親の執事だったなら、きっとエドとの思い出もあるはずだ。
実際、オレとエドはいつから一緒にいるのか分からないんだから。

エドが、オレより先に部屋の奥へ進む。
それがなかったら、オレはいつまでも入口にいたかもしれない。


「…見れば見るほど、オレも知ってる気がする」
「そうだろうな」
「え?」
「国王の執事をエドの父親がしてたんだろ?」
「そうか、オレがここに来ててもおかしくないんだ」


エドが、本棚に近づいて、一冊手に取る。
すごい数の本。


「これ、ただの本じゃないよ」
「え?」


エドが見せてくる本の裏表紙。
“マイクの成長を願って 使用人一同”の文字。


「マイクの周りにいた人たちが作った、マイクのアルバムだよ」
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