Only Three Months
エドがページをめくる。
父親の日記には、公務の合間に撮ったような写真が挟まってた。
このアルバムには、もっとプライベートなオレがたくさんいる。

サーが言ってた通りだ。
はしゃいでるオレが、ぎっしり収められてる。

転んで泣きそうになってるオレ。
汚れを拭いてもらってるオレ。
何をしててもカメラマンがいたんだろうな。

エドがどんどんページをめくっていく。
すべての写真の横に、いつどこで撮られたものかが記されていた。

他のアルバムにも手を伸ばして、ページをめくる。
積み木で遊んでるオレも、絵を描いてるオレもいる。
こんな時期も、ちゃんとあったんだな…


「…エドだ。
 変わってない」
「そう?」


途中から、エドの写真も出てきて。
オレのアルバムだから、オレと遊んでる写真がほとんど。

どの写真を見ても、一緒に写ってる大人は笑ってる。
オレやエドが泣いていても、周りの人の表情は優しかった。

…その感覚を、思い出すことはできなさそうだけど。
アルバムを見ていても、何も感じない。

エド以外の写っている人を覚えてもいない。
使用人たちと、アルバートの貴族や親族なんだろうか。


「みんな、楽しそうだね」
「ああ」


次にめくったページには、真っ暗な中でオレとオレの父親が写った写真。
説明がなくても、オレにはこれがどこで撮った写真なのかすぐに分かった。


「散歩のときに撮ったんだ」
「マイクがいつもしてる、夜の散歩?」


父親の肩に乗って、城を抜けて、夜の静かな森を歩いた。
そのペースも会話ももう覚えていないけど、父親と散歩してたことは記憶にあって。
アリーに会うまでは続けてた習慣だ。
この習慣がなければ、アリーに会うことはなかったんだ。
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