三音糖 ー森を駆ける少女ー
2走ー1
『じゃあ練習してみようっ!いっくよー?』
カチッ
『次の文字を入力してみよう!【Apple 】』
…タンッ………
『あと3秒だよ!』
…タンッ…タッ……
『…1…はい、終了~!君のタイピングレベルは0だよ!おめでとう!』
ーーー。
「…んがぁぁぁあああ!!もうやだ、もうやんない!!ムカつくぅー!!」
キーボードをガンガン叩きながら音倉 妹は叫ぶ。頭に血が上っている妹を画面の向こう側のキャラクターはこちらを笑顔で見つめている。それにムカついた妹が画面と喧嘩を始める。
「なにあの時間制限!遅くて悪いかっ!!おめでとう、なんて皮肉だろ!!なんだ、お前答えてみろ!!!」
「ほらほら、画面にケチつけても仕方ないじゃないですかー?」
後ろの席に座っていた菜穂が宥めようと後ろを振り返り、さっきからキーボードを叩いている手を取った。
『最速記録だよ!凄いね!おめでとう!』
菜穂の使っていたパソコンからは菜穂を讃える機械の声が聞こえた。
「天才か?お前は天才なのか!?まいを馬鹿にしにきたのか!?」
完全にブチ切れてしまった妹を必死に宥めようと菜穂が色々な方法を次々と使う。
「ガラガラガラ~、ほーらおもちゃですよ~」
「まいは赤ちゃんじゃない!」
「ほら、お魚ですよー、ほれほれ!」
「猫でもない!!」
「んもう、文句が多いよ!!」
「なんで、まいが怒られてるの!?」
ギャーギャーとクラス中が苦笑している言い争いの中、まいの隣のパソコンがボンッと音を立て黒い煙をあげた。
口を止め、煙が上がっている方を見るとキーボードのエンターキーに指を置いたまま固まっている朱莉がいた。
「ぅゎ……」
「ゎぉ……」
「………」
クラス中が静まり返り固まった。朱莉は静かに立ち上がるとキーボードを指差した。
「…あ、やばい。あかりんの裏が…」
言い終わる前に朱莉の裏が出てしまった。
「こ…このオンボロキーボード!テメェは私より格下のくせに私に逆らうつもりなのか!?なあ?このエンターキーがいいのか?気持ちいいから爆発したのか??なら連打してやろうか??…うりぁぁぁあああぁぁあ!!!」
みんなの思い描いていた朱莉が全て崩れた。エンターキーを連打する朱莉を妹と菜穂が「だめ~!ストップストップ!!」と必死に止めようとするが、暴走した朱莉は止まらない。エンターキーだけではなく、キーボード全体を貶し始めついには、パソコンに向かって自慢の悪口を吐き出し始めた。
そんな3人とクラスの生徒を見守るように画面の奥のキャラクターは笑顔で繰り返していた。
『最速記録だよ!凄いね!おめでとう!』
10分が経ち、混沌の中さすがに疲れたのか3人はドッと床に腰を落とした。
そして、静かな教室に1人の大人の怒号が響き渡った。
情報の授業が終わり、私達は教室へと戻る。
「そういえば、次なんだっけ?」
朱莉と妹に頰を抓られ赤くなったそこを撫でながら尋ねた。
…しかし、反応はない。
私の右にはパソコンを壊した事より、クラス中に自分の裏がバレてしまったことに後悔をして「もう、私お嫁にいけない」と死んだ目をしながら項垂れる朱莉。
左にはあの機械音が離れないようなのか「あいつ壊すあいつ壊すあいつ壊す…」と呪文のように唱えながら時々こっちを睨みつける妹。
2人は一斉に顔を向けて放った。
「「いま話しかけないでくれる?」」
ーーは…はいっ!申し訳ありませんでしたお二方!
あまりの恐怖に言葉が出なかった私はササっと2人の後ろへ回り、静かに後を付いていった。
国語の時間を全て睡眠時間にあてた2人の機嫌は昼休みにはすっかり治っていた。
「ごめーん!遅くなった!」
「おー!むねむねー!」
10分すると、全員が集まった。
読んでいた本をバックに戻し、顔をあげる。
「掃除終わったんだ。ところでむねむねって何?」
「なおちゃんのお胸さん、ほらいろいろ凶悪じゃん!だから!」
そう言うと、まいは私の胸を揉み始めた。
「ひゃっ…う、やめっ…ふ、2人も…あるじゃないですか~、ひゃっ…」
すると、なぜか朱莉の逆鱗に触れた。
朱莉の背後からはドス黒いオーラが立ち上っている。
髪の陰になりなかなか見えない目は、隙間から私を睨みつけている。その目はまるで、殺人鬼の…。
「へぇ~、私たちも"それ"ぐらいの大きさなんだ~。へぇ~」
「…んぐ」
怖すぎて言葉が出ない。いつもはまな板同盟として一緒にワーワー言っているまいも、同じように「マジ怖いですヤバイです」と言いながら頭をかかえブルブルしている。
とりあえず私は話を変えることした。
「そ、それより部活…始めませんか…?」
「そうだね、始めようか~。じゃあ私とまいは地図読み。"むねむね"は40km走ね。さぁどうぞ?」
「本当に申し訳ございませんでした~!!」
謝る以外に私に残された手段は何も無かった。
『じゃあ練習してみようっ!いっくよー?』
カチッ
『次の文字を入力してみよう!【Apple 】』
…タンッ………
『あと3秒だよ!』
…タンッ…タッ……
『…1…はい、終了~!君のタイピングレベルは0だよ!おめでとう!』
ーーー。
「…んがぁぁぁあああ!!もうやだ、もうやんない!!ムカつくぅー!!」
キーボードをガンガン叩きながら音倉 妹は叫ぶ。頭に血が上っている妹を画面の向こう側のキャラクターはこちらを笑顔で見つめている。それにムカついた妹が画面と喧嘩を始める。
「なにあの時間制限!遅くて悪いかっ!!おめでとう、なんて皮肉だろ!!なんだ、お前答えてみろ!!!」
「ほらほら、画面にケチつけても仕方ないじゃないですかー?」
後ろの席に座っていた菜穂が宥めようと後ろを振り返り、さっきからキーボードを叩いている手を取った。
『最速記録だよ!凄いね!おめでとう!』
菜穂の使っていたパソコンからは菜穂を讃える機械の声が聞こえた。
「天才か?お前は天才なのか!?まいを馬鹿にしにきたのか!?」
完全にブチ切れてしまった妹を必死に宥めようと菜穂が色々な方法を次々と使う。
「ガラガラガラ~、ほーらおもちゃですよ~」
「まいは赤ちゃんじゃない!」
「ほら、お魚ですよー、ほれほれ!」
「猫でもない!!」
「んもう、文句が多いよ!!」
「なんで、まいが怒られてるの!?」
ギャーギャーとクラス中が苦笑している言い争いの中、まいの隣のパソコンがボンッと音を立て黒い煙をあげた。
口を止め、煙が上がっている方を見るとキーボードのエンターキーに指を置いたまま固まっている朱莉がいた。
「ぅゎ……」
「ゎぉ……」
「………」
クラス中が静まり返り固まった。朱莉は静かに立ち上がるとキーボードを指差した。
「…あ、やばい。あかりんの裏が…」
言い終わる前に朱莉の裏が出てしまった。
「こ…このオンボロキーボード!テメェは私より格下のくせに私に逆らうつもりなのか!?なあ?このエンターキーがいいのか?気持ちいいから爆発したのか??なら連打してやろうか??…うりぁぁぁあああぁぁあ!!!」
みんなの思い描いていた朱莉が全て崩れた。エンターキーを連打する朱莉を妹と菜穂が「だめ~!ストップストップ!!」と必死に止めようとするが、暴走した朱莉は止まらない。エンターキーだけではなく、キーボード全体を貶し始めついには、パソコンに向かって自慢の悪口を吐き出し始めた。
そんな3人とクラスの生徒を見守るように画面の奥のキャラクターは笑顔で繰り返していた。
『最速記録だよ!凄いね!おめでとう!』
10分が経ち、混沌の中さすがに疲れたのか3人はドッと床に腰を落とした。
そして、静かな教室に1人の大人の怒号が響き渡った。
情報の授業が終わり、私達は教室へと戻る。
「そういえば、次なんだっけ?」
朱莉と妹に頰を抓られ赤くなったそこを撫でながら尋ねた。
…しかし、反応はない。
私の右にはパソコンを壊した事より、クラス中に自分の裏がバレてしまったことに後悔をして「もう、私お嫁にいけない」と死んだ目をしながら項垂れる朱莉。
左にはあの機械音が離れないようなのか「あいつ壊すあいつ壊すあいつ壊す…」と呪文のように唱えながら時々こっちを睨みつける妹。
2人は一斉に顔を向けて放った。
「「いま話しかけないでくれる?」」
ーーは…はいっ!申し訳ありませんでしたお二方!
あまりの恐怖に言葉が出なかった私はササっと2人の後ろへ回り、静かに後を付いていった。
国語の時間を全て睡眠時間にあてた2人の機嫌は昼休みにはすっかり治っていた。
「ごめーん!遅くなった!」
「おー!むねむねー!」
10分すると、全員が集まった。
読んでいた本をバックに戻し、顔をあげる。
「掃除終わったんだ。ところでむねむねって何?」
「なおちゃんのお胸さん、ほらいろいろ凶悪じゃん!だから!」
そう言うと、まいは私の胸を揉み始めた。
「ひゃっ…う、やめっ…ふ、2人も…あるじゃないですか~、ひゃっ…」
すると、なぜか朱莉の逆鱗に触れた。
朱莉の背後からはドス黒いオーラが立ち上っている。
髪の陰になりなかなか見えない目は、隙間から私を睨みつけている。その目はまるで、殺人鬼の…。
「へぇ~、私たちも"それ"ぐらいの大きさなんだ~。へぇ~」
「…んぐ」
怖すぎて言葉が出ない。いつもはまな板同盟として一緒にワーワー言っているまいも、同じように「マジ怖いですヤバイです」と言いながら頭をかかえブルブルしている。
とりあえず私は話を変えることした。
「そ、それより部活…始めませんか…?」
「そうだね、始めようか~。じゃあ私とまいは地図読み。"むねむね"は40km走ね。さぁどうぞ?」
「本当に申し訳ございませんでした~!!」
謝る以外に私に残された手段は何も無かった。