ノラと呼ばれた男【壱】
ふぅ、っと息を吐き。
瞼を閉じれば、昔の事を最近の事の様に思い出す。
『おい、お前さ…………一人か?』
バケツをひっくり返したかの様な雨の日
既に日は沈み、主役は太陽から月へと代わり始めた時間帯に‘’俺‘’は拾われた―――――――――――――――……
俺に声を掛けてきた湯川搖は、当時。
四龍王の総長をしていた(らしい)
『は……?お前…………女!!??』
性別が男だと思い込んでいた搖が、自分の性別を知ったのは…………、
倉庫に連れていかれた後で、
自称『イケメン』とかほざいてた男が、『そいつ、女の子じゃん』と呟いた事がきっかけだった……………………が、
『まじか、女であんだけ強ければ勿体ねぇなぁオイ』
そう、言ったのは搖で。
そんな自分の横に立つ搖は、どこからどう見ても服がはだけてヨレヨレだ
まぁ、元凶は自分ですが。
‘’ついて来いよ‘’と差し出された手を、躊躇わずに取る馬鹿はそうそう居ないだろ?笑
俺はてっきり、変な趣味したナンパか何かだと思ってたし←言い訳
だから、つい……………………、
『え゛…………コイツ、喧嘩できんの』
ちょこっとだけ、暴れちゃった←テヘ
痴漢撃退法。って理由で許してほしい
『嗚呼、ほぼ互角』
『はぁ!!??お前と互角とかどんだけ化けもんだよ』
『急所とか教えたら、もっと強くなるだろーな』
などと言う過大評価に、半笑いで返した
これから、どうなるのか。
女が居ていい場所じゃないのは…なんとなく分かってた。下手したらヤバイとこ来たかな、なんて他人事の様に考えていた俺に、
手を差し出した搖
『お前さ、‘’男‘’として喧嘩してみねぇ?』