ノラと呼ばれた男【壱】
○限られた時間の中で
【???side】






殺したいほど嫌いな奴がいた。

いつも向けられる目は、憎悪に満ちていて。殺らなければ殺られると、分かっていたからだ


だからこそ思う

あの時、なぜ俺は……、俺が殺せていたら、

きっと楽だった。






「………………………………っ、」



あの時、俺はなんて言っただろうか

目の前で消える命を、どんな顔して見ていただろうか





もし、もう一度やり直せるなら俺は……、














――――――……ブーブーブー



暗い部屋の中、天井に向けて手を伸ばして‘’あいつ‘’の影を掴もうとしたが、

結局その手は何かを掴む事なく、携帯の音で手を下ろした








夢を見ていたのか、幻覚だったのか、

どちらにしろ、あまりにもリアルに思いだし、無駄に身体が重い。




ギシっ、と音を立てながらベッドから起き上がり、乱暴に前髪を後ろへと流した――――――――――――――――……

































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