ノラと呼ばれた男【壱】
「え、うん……私は大丈夫」




そっか、私、覇王の幹部以外とは初対面だもんね。そりゃ「アンタ誰?」って顔もされる訳で、

だからこその‘’挨拶‘’か





「一華ちゃん、緊張する?」




「姫なら大丈夫!皆とも仲良くなれるよ♪」




「側には俺らも立ってるしな」








皆、表情はバラバラだけど、



それぞれに心配してくれているようで。

まぁ、そりゃそうか。
さっき、ざっと見ただけでも下には50人くらいはいたし、





普通なら緊張とか、するかもね



そう、私が「普通」ならね







びびるほど可愛い性格なんて持ち合わせてないんだよ。残念ながらね

皆が「仲間」と言ってくれるなら、

対等だと思ってくれるなら、






私も、それに答えたい



「うん、側には居てね」

ニヤッ、と笑えば時雨に「は。生意気な奴め」と鼻で笑われたが、

決してバカにしてる訳でなく、寧ろ、楽しんでるような表情で、






「じゃ、サクッと済ませちゃお♪」




「二階のフロアで全員が見渡せるから、そこから挨拶するといいよ」





「うっかり、チビるなよ」



最後の台詞は綺麗にスルーするとして、軽く頷き、部屋を出る彼等の後を追う


ドアが開き、見えたのは全員の顔

下にいた全員が、私達の出てくるのを待っていたらしい





ザワつきがあるものの、皆の意識は上にいる私達へと向けられていた。

そんな中、静かに片手を上げる迅

瞬間。時が止まったように、静まり返る






「悪いが、少しばかり時間をくれ




……………………紹介したい奴がいる」






一瞬、感じた迅の視線。

それに頷き、一歩前へと出る。





下にいる下っ端くんたちが、私を見上げる形で見てくる。それは形上そうなる訳で、

なんとなく、それが嫌で、




私は考えるよりも早く、片手で手摺を掴み。勢いを着けて2階から1階へと身を投げる。勿論、着地を失敗する…なんて事は無かったが

全員の目が点になった瞬間でもあった







「姫川一華です、よろしく」



皆が対等に扱ってくれたから、皆が「仲間」だと言ってくれたから、

だからこそ。彼等の下に付く下っ端くんたちにも対等でありたいと思った


ただ、それだけの理由。

でも充分の理由でしょ?








深々と頭を下げれば、何故か、



「おまっ、なっ、あっぶねぇだろーがバカ一華」




「そ、そそそそうだよ怪我したらっ!」





「一華ちゃん大腿だね、怪我はない?」





「大丈夫か一華」


全員が血相変えて走ってくるから、ちょっと笑えた

そんな中、一気に歓声が上がり、



流石の私も、びびりまくって下っ端くんたちに視線を向ければ…………、














‘’なんか分かんねぇけど気取らなくていいんじゃね?‘’



‘’皆さんの慌てた顔、初めて見たっす‘’



‘’俺は賛成!姫川ちゃん大歓迎!‘’
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