ノラと呼ばれた男【壱】


















「手遅れだったよ、姫」






ずっと、俺の昔話を聞いてくれてた姫に笑いかければ、




小さい声で「バカだなぁ」なんて言われて、










再び目頭が熱くなる。こんなダサい俺、見せたくないのに駄目だ…止まらない




「頑張ったね、藍



もう……許してあげて、自分自身を」






「~~~~~~~っ、」







「泣いていいんだよ」



そんな優しすぎる言葉に、喉が詰まる

誰かに言って欲しかった言葉

でも、ずるい……姫が言っちゃうなんて





迅にすら、泣くとこ見せなかったのに


だって迅に言ったら全て俺の傷を背負おうとするから、




だから迅には見せなかったのに、




なんで、あっさり姫が俺を助けちゃうのさ








「ねぇ……姫、」



「ん?」



「俺ね欲張りなんだ」




「うん?」
< 61 / 168 >

この作品をシェア

pagetop