ノラと呼ばれた男【壱】
嗚呼、懐かしいな
搖の言う、‘’アルバイト‘’とか‘’お小遣い稼ぎ‘’って言葉を聞くの、
昔もしてたもんなぁ、
行き場を無くした怒りの捌け口を探してた‘’俺‘’に搖が与えてくれる仕事
所謂、‘’掃除‘’
正統派の族には手を出さない。それがルール
でも、そうじゃない暴走族は片付ける
無慈悲に、残酷に、冷徹に、
「相手は?」
「乱鬼の傘下にある、‘’爛‘’。
してきた罪は重い、そのせいで女が一人……………………自殺した」
と、大きくも小さくもない、静かな声で告げる搖。
ドクン、と嫌な音を立てる私の心臓はある意味正直なのかもしれない、
――――――――――――――……一華
聞こえるはずのない、声。
忘れるはずのない、声。
私の好きだった……………………あの人の声
「強制はしない、どーするハニー」
と、搖の声で現実に連れ戻された私は、
考える事なく、
「引き受ける、期限はいつまで?」
「そうか……、早ければ助かる」