ノラと呼ばれた男【壱】
俺にとっては、支えだったから――――――――――――――……、
「あれ、二人とも……此処に居たの?」
と、過去に浸っていた俺と、瞼を閉じてベランダの手すりにもたれ掛かっている搖に声を掛けたのは姫川 一華で、
此方へやってくる姫川の髪は濡れていて、滴がポタポタと落ち、
近付くに連れ、ふわりと石鹸の香りが鼻を掠めた。
「…………チッ、やらかした」
そう、真顔で言ったのは搖で、手を震わせながら顔を覆う。
まるで何か……重大のミスをしたかの様な口調と、険しい表情で…………………………………………、
「ハニーのお風呂現場突撃するの忘れてたあぁぁぁぁぁぁ!!!!」