ぜんぶ抱きしめて。〜双子の月とキミ〜
1・月に導かれて
「いってきます」
玄関から低い声が聞こえる。私はそれを必死に追いかける。
今日も私の方が起きるのが遅かった。同じ時間にアラームをセットしているはずなのに、あっちの方が夜遅くまで勉強しているはずなのに、なぜかいつも私の方が遅い。
「瑠奈(ルナ)~。ちょっとは朔(サク)を見習ったら?」
バタバタと慌てる私の背中に、お母さんがため息交じりの言葉を投げる。
「あんたったらこの前のテストはボロボロだし、進路も決まってないし、これからいったいどうするつもり……」
「いってきまーす」
スクールバッグを肩に引っかけて靴を履いている間に、朔の姿は見えなくなっていた。一度バタンと音を立てて閉まりかけたドアを慌てて開けると、電池式で施錠されるようになっている自動キーがピピピピと警告音を発した。
「もう、何やってるの」
お母さんがパタパタと玄関に出てくる足音を聞きながら、ドアを閉めて外に出た。朔はもう家の敷地を出て、歩いて十歩くらいのところにある角を曲がろうとしていた。
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