ぜんぶ抱きしめて。〜双子の月とキミ〜


そんなことを言ってから後悔した。私がいなくなって朔が得することはお小遣いだけかい。そう、朔は一人でなんだってできる。誰と比べられても恥ずかしくないスペックを持ってる。だから、私がいようといまいと、あまり関係ないんだ。

情けなくてうつむくと、朔の声がぼそぼそと聞こえた。


「あほ。そんなの、今のうちだけだろ。小遣いなんてすぐもらえなくなるんだから」


そうだよね。大学生になってバイトを始めたらお小遣いなんてなくなる。


「しんどいこともさ、きっと俺たちには必要なことなんだよ。大人になって成長していくために」

「うん……」

「大丈夫。俺は地方の大学受ける予定だから、受かったら自動的に離れられる」


そうなんだ。知らなかった。一年の二学期で、もう受験校を決めていたなんて。そっか。そうだよね。双子だからって、ずっと一緒に生きていくわけじゃないんだ……。


「想史を忘れて別の男を好きになる日だっていつか来るだろ。大学や就職先、行く先々で嫌なやつもいるだろうけど友達もできるさ。だから、今から異世界に行ったりしなくていい……」

「朔?」


突然語尾がむにゃむにゃしだしたので、ビックリしてモニターを見る。けど、警告音も出ないし画面が点滅したりしもしない。


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