ぜんぶ抱きしめて。〜双子の月とキミ〜


産まれたときからずっと一緒で、小学校低学年まではどこに行くのも一緒だった。仲が良くて、家でも保育園でも学校でも一緒に遊んだ。

並んで撮った写真、たくさんあるね。何でも、初めてのことをする日は朔と一緒だった。初めてバナナを食べた日も、初めてブランコに乗った日も。おそろいの服を着て出かけると、近所のお年寄りに必ず声をかけられたね。

七五三の写真はまるで小さなカップルの結婚式みたいだった。入学式は二人とも学校から配られた黄色の防災用ヘルメットを被せられて、嫌な顔をしてたね。

そうして思えば、朔と双子で楽しいこともいっぱいあった。つらいことばかりじゃなかった。

今だって、私の変化に気づいてくれたのは朔だけ。想史のことでショックを受ける私に向き合ってくれたのも、朔だけだった。


「ごめん……」


それなのに、朔さえいなければいいと思うなんて。ひどいよね。どこまでもずるいよね。

そっと立ち上がり、起こさないように布団を少しよけ、朔の手を握ろうとした。そのとき、病室のドアが開いた。


「あら、寝ちゃった? なによ、朔のものたくさん持ってきたのに」


両腕に大きなビニールバッグを抱えたお母さんがふうふう言いながら荷物を下ろす。その中から朔の好きな漫画本や着替え類がのぞいていた。家でシャワーを浴びてきたのか、お母さんの服がさっきと違うものになっている。


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