ぜんぶ抱きしめて。〜双子の月とキミ〜
「でも瑠奈……どうしてこんなところに?」
「あ、えの、あっと……病院にお見舞いに行ってきたんだけど……私だけ先に帰ってきた。明日も学校があるから。でも家にいるのが嫌で……気分転換、みたいな」
最初の質問に戻る。どう答えていいのかわからず、しどろもどろになってしまう。
「ふうん……」
想史は難しい顔をする。
「さっきも思ったけど、おばさんと喧嘩でもした? 朔とはまあ、兄妹だしなんか素直になれないのはわかるんだけどさ。誰もいない家に居づらいなんて、相当だよ。何か悩んでるなら、俺聞くよ」
これって、私のこと心配してくれてるんだよね? 胸がじーんと熱くなる。でも、これってきっと私を叩いたことからくる罪滅ぼしなんだよね、きっと。
それに、今優しくしてくれたって、所詮想史は他人の彼氏。優しくされればされるほど辛い。ますます好きになってしまうから。
「ありがとう。大丈夫だから。じゃあ」
私は逃げるように、公園の方へ早歩きする。
「ちょっと待てよ。夜に一人で歩いてたら危ないだろ。家まで送ってくよ」
想史が追いかけてくる。そんなことしなくていいのに。私のことなんて、放っておけばいいのに。