ぜんぶ抱きしめて。〜双子の月とキミ〜
「え……」
私の右から左へ流れていくそのシャボン玉を目で追いかける。それは今の自分と同じように、道に迷っているように見えた。
どくどくと鼓動が早くなる。あれは何? 迷子になってしまっている、私の魂……。だけど、私はここにいる。
もしかして、と思い当たる。私があっちの世界に行ったとき、元々あっちの世界にいた私はどうなってしまうんだろう、と。病院で疑問に思ったことだ。
体はそのまま、この私の魂に押し出されて、あっちの私の魂はこのわけのわからない空間をさまよっているんじゃあ……。
深く考えそうになり、首を横に振った。そんな意味のわからないこと考えている余裕は無い。そもそも、あのシャボン玉の正体もはっきりしない。シャボン玉に写っていたのは、この私の顔だった。それだけのことかもしれないし。
それ以上考えるのはやめた。とにかく私は、あっちの世界に行かなきゃいけない。並行世界だかなんだかわからないけど、皆が私に優しい世界に。
強く決意して一歩を踏み出す。すると、足元に突然大きな穴が開いた。バランスを崩した体が大きく揺れる。
落ちる。水の中に落ちたように、息が苦しくなる。ぎゅっと目を瞑り、もがいた。どれくらいそうしていただろう。