ぜんぶ抱きしめて。〜双子の月とキミ〜
翌朝、頬の腫れが完全に引いたことを確認して家を出ると、いつもの角で想史が待っていた。まだ少し緊張しながら、彼の横に立つ。
「おはよう」
「おはよう」
挨拶して歩き出す。登校中はさすがに手は繋がない。堂々と繋いでいる人たちもいるけど、見ているだけで恥ずかしい。
隣で歩いていると、ふと指先が触れあう瞬間がある。それだけでも、ドキドキした。
「会いたかったよ、想史」
「は?」
想史はきょとんとした顔をする。そっか、こっちの想史はあっちであったことを全然知らないんだよね。昨日会ったばかりなのにこんなことを言うなんて、変だと思われたかな。無理やりに話題を変えてみる。
「ねえ、想史ってカッとなることある?」
「ん? んー、そりゃあムカつくことはあるけど」
「人を殴ったり、叩いたりしたことは?」
「小学生のときふざけてやってたことはあるけど、それ以降はないんじゃないかな」
どうしてそんなことを聞くんだろうというような顔の想史。
「私と喧嘩したら、叩いたりすると思う?」
「はあ? するわけないだろ。いくらムカついても、女の子を叩いたりしないよ」
それがね、あなたしたんですよ。元の世界では私より朔が大事だもんね。