ぜんぶ抱きしめて。〜双子の月とキミ〜


そんなことを話しながら移動教室で二年生の教室の近くを通ると、見知らぬ女生徒たちがこちらを見ていたような気がした。そのまま通りすぎると、ぼそぼそと声が聞こえる。


「ほら、あれ校門の前で告白したっていう」

「調子乗りすぎじゃない? そんなに可愛くないじゃん」


ぎくりとして足を止めそうになるけど、穂香にぐっと腕を引かれて、足早にその場を去った。あれってもしかしなくても、私のこと?


「気にしない方がいいよ。あんなの、瑠奈の事が羨ましいだけだから」


私にだけ聞こえるように、小さな声で話す穂香。どうやら、私のために怒ってくれているみたい。もちろん私も気分が悪いけど、穂香のお人形みたいな顔が怒っているのを見たら、自分が怒るタイミングを逃した。


「他人のことを妬んでたって、意味ないのにね。自分の幸せは自分でつかまなきゃ。って、私も彼氏いないんだけどね。どこかに素敵な人いないかな~」


悪気のない穂香のセリフがグサグサと胸に突き刺さる。まるで私が言われているみたい。

他人の事を妬んでたって、意味はない。自分の幸せは自分でつかむべき。

そんなのわかってるし。でもそれは穂香が綺麗だからそう言えるのであって、私みたいな普通の子は、自分から行動する勇気が出せずにいることも多いんじゃないかな。なんて、心の中で言い訳する。


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