ぜんぶ抱きしめて。〜双子の月とキミ〜


雨は土管の横っ腹に叩き付けているようで、両側の穴からはそれほど降りこんでこない。


「ここ、一度子供の頃に入り込んで怒られた。学校に通報されて、親が呼び出されて」


想史がそう言いながら、バッグからスポーツタオルを取りだす。それで私の髪をわしゃわしゃとふいてくれた。私より手足が長い分、土管の中はかなり狭そう。

それより気になったのは、彼が話す子供時代のやっちまった出来事。そういえば、男の子だけで資材置き場に入り
込んで遊んでいるところを通報され、うちのお母さんも学校に呼び出されていた。その場に、朔もいたから。

お母さんたちに怒られているのに、男の子たちは『なんでそこにあるもので遊んじゃいけないのかわからない』と言うような、平気な顔をしていた。他人の説教なんて聞く気がないのが男子というものだとそのとき悟った。

朔……。さっき雨の中で見た、何か言いたげだった朔の顔が浮かぶ。彼は私に、何を伝えたかったんだろう。


「寒い? 大丈夫か?」


黙りこくったせいで、体調が悪くなったと思われたみたい。慌てて首を横に振ると、拭ききれなかった水滴が髪の先からぴっぴと飛んでしまった。


「なんとか大丈夫」


まさかこんな時機に台風が来るなんて。空気はむしむしして熱いくらい。制服は濡れて肌にはりつき、スカートのひだもなくなってしまった。


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