ぜんぶ抱きしめて。〜双子の月とキミ〜
「ちょっと小降りになるまで待つか。これだけ濡れちゃったら一緒かもしれないけど」
「ううん、雨宿りに賛成。視界が悪くて危ないもん」
土管の外では風や雨がごうごうと鳴っている。がらがらと放られていた資材が転がる音もした。何が飛んでくるかわからないから、おさまるまで少し待った方が良さそう。穂香は無事に帰れたかな。
狭い土管の中で想史と二人でいると、まるでそこだけが雨のカーテンに遮られた異世界のように感じられる。
走ってきて乱れた息が整ったころ、私の方からぽつりと話しはじめた。
「私ね、違う世界にいたんだよ」
何故かはわからないけど、そんな言葉が口を突いて出た。反響した言葉に想史がこっちを向く。
「は?」
「違う世界の……夢? 長い長い、夢を見ていたの」
この前まで、私は元の世界を現実でこっちが夢だと信じていた。でも今は、どっちも実在する世界なのだと思っている。同じ次元で、でも違う時空の、一卵性双子のようにそっくりだけど、少しだけ違う世界。
そんなこと想史に言っても混乱させるだけなので、元の世界のことは夢と言っておくことにした。
「どんな夢?」
興味を持ったように、想史が顔を近づけて聞いてきた。