ぜんぶ抱きしめて。〜双子の月とキミ〜
すらりと伸びた背に、短く切った黒髪。プラスチックのメガネをかけて部活用の大きなスポーツバッグを肩からかけた彼は、私の双子の兄・朔。
背が小さくて、色素が薄くて細い髪はいくらカーラーやドライヤーで膨らませても昼にはぺちゃっとしている。そんな私は妹の瑠奈。
ちょっと目が離れている典型的な日本人顔の私と比べて、朔は彫りが深くて目も眉もキリッとしている。
見た目も良く、勉強もできてスポーツもできる朔。私は全部が平均点。勉強は最近やる気をなくして平均点もとれなくなってきている。
自慢のお兄ちゃんだね、なんて他人は言うけどとんでもない。朔がいるせいで私の存在価値なんてゴミ以下だ。
『朔はできるのにどうして瑠奈はできないの?』
中学くらいから背も成績もぐんぐん伸びだした朔と比べられて私はそう言われ続けてきた。
小学生までは私の方ができたのに。背もちょっと高かった。保育園の頃なんか、小さなことですぐにビービー泣く朔の面倒を見てあげてたのに。
とにかく、そんな朔と一緒に学校に行きたくて急いでいるわけでは決してない。あっちだって私のことを鬱陶しがっている。私たちは同じ目的で同じ時間に家を出ているだけ。