ぜんぶ抱きしめて。〜双子の月とキミ〜


なにこれ。日食でも月食でもない、何ていう現象??

数秒の間に月はゆっくりと重なり、完全に一つになった。すると。


「う……わあ……っ」


月の光が波打つようにこちらに近づく。ぐにゃりと周りの空気が歪んだように見えた。すべり台ごと地面が揺れて、必死でそばにあった手すりをつかむ。

右に左に、上下にも揺さぶられて気持ちが悪くなった。まるでジェットコースターに乗っているみたい。そしてしばらくその揺れが続いた後、これまたコースターが急停止したように、ぐんと体が前に放り出されるように感じた。

手すりを持って、すべり台から転げ落ちるのは阻止した。揺れはおさまり、辺りはとても静かだ。ときどき、秋の虫の声が聞こえてくるくらい。

なんだったんだろう、今の。そっと目を開ける。めまいにしちゃ、強烈すぎた。地震なのかと思ったけど、周囲の家の静けさから察するに、そういうわけでもなさそう。それなら街灯が停電したり、もう少しざわざわとするはずだ。だって、けっこう長い間強く揺れていたもの。

いつの間にか汗びっしょりになった全身。瞬きをすると、前髪からぽたりと雫が垂れた。

周りを見回してみるけど、特に何かが変わった気配はない。


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