ぜんぶ抱きしめて。〜双子の月とキミ〜
朔と想史は今でも親友で、私はひとり女だからか、一緒にいても彼ら二人の関係の中には対等には入れていない。そんな気がしていた。そもそも私と朔は友達じゃないしね。
「おまえら、高校生にもなって一緒に通学なんてほんと、仲良いよなあ」
想史が私と朔の顔を交互に見てそんなことを言う。
「仲良くねーよ!」
「仲良くないし!」
ムキになって否定すると、朔と声が合ってしまった。フンと顔を背けると、そのタイミングまでばっちり一緒だった。
「やっぱ面白いわ、おまえら」
明るく笑う想史とは対照的に、朔は苦虫をかみつぶしたような顔で私をにらんだ。そのとき、後ろから車のエンジン音がちかづいてきた。この辺りの道幅は細く、二台車がすれ違うのがギリギリ。仕方なく、端に寄ろうとした瞬間。
同じく車に気づいたらしい想史が立ち止まり、私の腕をつかんで引き寄せた。車から庇うように自分が車道側に立ってくれる姿は、まるで王子様。ドキドキと心臓が鳴る。
自然とこういうことができる想史が好き。朔に爪の垢を煎じて飲ませてあげたいよ。