ぜんぶ抱きしめて。〜双子の月とキミ〜
「ええと……」
本当のことを教えていいのかどうか、一瞬迷う。原因不明の病で入院しているなんて言ったら、穂香はどんなリアクションをするだろう。
「ちょっと体調が悪くて。今日も休んでるんだ」
「そうなんだ。風邪?」
「みたいなもんだと思う」
「ふうん。じゃああんまりうるさくしても悪いよね。回復したら連絡してって言っといて」
穂香は納得したようで、少し笑顔を見せた。罪悪感で胸が痛む。
いいよね、嘘は言ってないもん。今日も何か検査してるはずだし、原因がわかってから知らせる方がいいような気もする。帰ったらお母さんかお父さんに相談してみよう。あまり言いふらすなって言われるかもしれないし。
「はあ……」
うちの高校は授業が始まる前に、携帯を担任に預けなければならない。そのために電源を切ろうとする。何の通知もなくてほっとした。と同時に落胆した。何も連絡がないってことは、朔は昨日と変わらないってことだ。悪くなってなければ、良くもなってない。
何か変化があって、私も病院に行かなければならないような事態になれば、お母さんから学校に連絡があるはず。そんなことはないと信じて、いつも通りに授業を受けなきゃならないなんて、しんどいな。