独占欲全開で、御曹司に略奪溺愛されてます
とっても上機嫌な喜多さんに手を引かれ、私は玄関内へと足を踏み入れた。
磨き上げられた玄関も、正面に飾られている不気味な鎧も、室内の静けさも、ここを出た4年前となにも変わってない。
それなのに、家に帰ってきたというよりも、今から他所様の家にお邪魔するという気持ちのほうが強かった。
憂鬱は増幅していく。しかしここまで来てしまったのだから、腹をくくるしかない。
はやく用事とやらを済ませて、アパートのあの小さな部屋にさっさと帰ろう。
覚悟を決め家にあがると、ひとりの家政婦が足音もなく私の前に進み出てきた。
そして完璧な角度でお辞儀をしてくる。
「麻莉お嬢様、お帰りなさいませ」
真面目そうにも、はたまた不機嫌そうにも見える顔を向けられ、私は射すくめられたように身を強張らせた。
「……た、ただいま、です」
「お荷物お持ちいたします」
「……はぁ。すみません」
黒髪にひっつめ頭の彼女は、斉木(さいき)さん。
彼女もまた西沖家の家政婦であるけれど、主に母の小間使いのような立ち位置にいる人である。
私は昔から、彼女のことが苦手だった。
苦手意識をずっと持っていたけれど、それは家を離れ4年経った今でも心に残り続けていたらしい。