独占欲全開で、御曹司に略奪溺愛されてます
もうすぐ家に着いてしまう。
話すべきなのはもっと他のことなのに、話を切りだしたその瞬間、この関係が完全に終わるのだと思うと、なかなか話題を変えられない。
例え偽りだったとしても、一分一秒でも長く、遼の好きな人でいたいと思ってしまう。
ハンドルに片手を添え、微笑みを浮かべている遼の横顔を、ちらちらと見つめていると、タイヤがキッと音を立てた。
窓の外には、三階建ての小さなアパート。三階の右端の部屋が私の住む部屋だ。
「今日はいろいろありがとう」
名前を貸してくれてありがとう。恋人のふりをしてくれてありがとう。
続けるべき言葉は浮かんでくるのに、声にして伝えられそうにもない。
気持ちを落ち着かせながらシートベルトを外すと、私の手を遼が掴んだ。
ハッとし見たのは、彼の真剣な顔。どきりと鼓動が跳ねた。
「……やっぱり、帰るんだよな?」
「え?」
「無事鍵も戻ったんだから、今日も……今夜も俺と一緒に過ごす必要が無いことは分かってるけど」
彼の瞳の奥に生まれた甘やかな熱に、胸がきゅっと苦しくなる。
「帰したくない」
艶っぽい声音で求められてしまえば、私は簡単に反応してしまう。心も体も彼への思いでいっぱいになっていく。