独占欲全開で、御曹司に略奪溺愛されてます
もうすぐ休憩時間だ。その時に一度電話をかけてみても良いかもしれない。タイミングが良ければ、遼の声が聞けるかもしれない。
楽しみで待ちきれなく思いつつも、私はやりかけの仕事を片付けるべく、椅子に腰かけようとした。
しかし、バタバタと慌てている足音が聞こえてきて、私は椅子に座ることをせず、スタッフルームのドアを凝視する。
「西沖さん」
すぐにドアが開かれ、先ほど話していたアルバイトの女の子が入ってくる。
「え? どうしたの?」
打って変わって、明らかに困惑しているその顔に、何事かと私も動揺を隠せない。
「あの……お客様が、西沖さんを呼んでます」
「私を?」
「はい。今、店長が接客してくれているんですが……なんだかひどく偉そうというか」
誰の顔も思い浮かべられないまま、ひとまず私は「分かった、今行きます」と返事をし、歩きだした。
アルバイトの女の子と共にスタッフルームを出ればすぐに、男の人の不機嫌な声が聞こえて来た。
「麻莉、いるんだろ? さっさとここに連れてこいよ!」
聞き覚えのある声に、私は思わず足を止める。
足音をたてないように進み、物陰から声のする方を覗き込めば、入口近くの席に態度悪く座っている榊さんの姿があった。