独占欲全開で、御曹司に略奪溺愛されてます
その傍で、店長がおろおろしている。
同じ男性なのに、とても線が細く声も小さいからか、ひどく弱々しく今にでも泣き出しそうに見えた。
「あの人です。知り合いですか?」
そう問われ、隣りで私と同じような格好になっているアルバイトの女性に頷きかえした。
「行きますか? それとも奥で隠れてますか?」
ほんの一瞬、出来るものなら隠れてしまいたいと思ってしまったけれど、困り果てている店長の顔を見てしまえば、このまま榊さんを押し付けることなどできなかった。
「私に用があるみたいだから、私が行かなくちゃ。それにお客様は他にもいるし、とりあえず彼には大人しくしてもらわなくちゃね」
自分で言いながら不安になる。たぶん私が行ったところで、榊さんを大人しくさせることなどできないだろう。
「なんか変な人ですし、気をつけてくださいね。私、いつでも警察に連絡できるように、スマホ握りしめてますから!」
「ありがとう」
心強く感じながら、私は榊さんに向かって歩き出した。
「榊さん」
呼びかければ、場が静まりかえった。榊さんが私の声に気付き、口を閉じたからだ。