独占欲全開で、御曹司に略奪溺愛されてます
けれどすぐに、彼は私を見て不敵な笑みを浮かべる。
「なんだ。やっぱりいるじゃねぇか。もっと早く出てこいよ」
正直、怖かった。
対峙すれば微かに指が震えてしまうけれど、表情だけは毅然としたままで居続けられるよう、私は必死になる。
「今日は何の御用でしょうか? お食事ですか?」
「お前と話がしたくて来たんだよ」
「お客としてきたのでなければ、すぐに店から出て行って下さい。仕事が終わったあとなら、いくらでもお話を聞きますから」
仕事が終わったあとのことは今は考えないようにして、私はきっぱりと要求を突き付けた。
榊さんはむっと顔をしかめた後、何かを思いついたように笑った。
「だったら、俺は客だ。コーヒー持ってこい」
追い出すことに失敗したことを悟ると同時に、このまま居座られてしまいそうな予感に、思わず眉根を寄せる。
黙ったままでいると、榊さんがバンッとテーブルを叩いた。
「持ってこいって言ってんだよ! 早くしろ!」
店内にいる他の客たちが、何事かと不安そうな顔でこちらの様子をうかがっている。
隣にいる店長と顔を見合わせた後、私は榊さんに頭を下げた。
「今すぐ、お持ちいたします」