独占欲全開で、御曹司に略奪溺愛されてます
荷物を彼女に渡すことに抵抗を感じるけれど、申し出を拒否するのは怖くてできなかった。
差し出された彼女のほっそりした手へと、私は持っていたショルダーバッグを預けたのだった。
「斉木さん、お嬢様が怖がっておられますよ。もう少し愛想よくなさい」
ため息交じりに喜多さんが注意するけれど、当の本人はそれに従うつもりはまったくないようだった。
喜多さんをちらりと一瞥してから、無表情のまま次の言葉を発する。
「奥様がお待ちです。ご案内いたします」
困ったわねという表情を浮かべていた喜多さんと、ほんの一瞬顔を見合わせてから、私は斉木さんに向かって「はい」と返事をした。
連れて行かれたのは、リビングルームだった。
30畳の広さを誇るリビングには、絨毯やソファー、テーブルをはじめ、ほとんどの家具が母の好きな海外ブランドのもので揃えられている。
1LDKでの生活に慣れ切ってしまった私には、この広い空間が居心地悪くてしかたがない。
「奥様、麻莉お嬢様がお越しです」
私の前にいた斉木さんがうやうやしく頭を下げると、ソファーに座っていた女性が立ち上がった。
「麻莉、待たせすぎよ」
母だった。不機嫌さを隠すことなく、私を見つめてくる。