独占欲全開で、御曹司に略奪溺愛されてます

反論しようとすれば、榊さんに強く手を引かれた。近付いてしまった互いの距離に、背筋が寒くなる。


「そうなんだよ。お前たちの結婚を西沖の親は望んでいない。反対されたまま無理やり奪い取るような真似をすれば、倉渕物産のマイナスに繋がりかねない。そんなことを、果たしてアイツがするかな?」


遼本人は損得で物事を決めるような人ではない。

そう強く信じているのに、榊さんの言葉で気持ちが揺らいでしまう。

倉渕物産のこれからや、大勢の社員のことを思う時、彼は上に立つ者として、どのように考え、どのような選択をするのだろうか。


「倉渕のやつにだって、縁談くらいいくらでも舞い込んできているはずだ。お前以上の物件が舞いこめば、お前のような面倒くさい女よりも、その女を取るだろう。アイツはいずれ、お前を切り捨て他の女と結婚する時がくる」


嫌な予言に、ちくりと心が痛んだ。考えただけで、涙が込み上げてくる。

遼のそばにいられないことも、遼が誰かと結婚してしまうことも……そんなの絶対に嫌だ!

榊さんが再び私の手を引いた。

反射的に顔を上げれば、至近距離で見つめ合う形になってしまい、嫌悪感が込み上げてくる。


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