独占欲全開で、御曹司に略奪溺愛されてます
「なんだ。その顔は! さっさと拾えよ。怪我したらどうしてくれるんだ!」
私の態度が頭にきたらしい。榊さんが唇を震わせ怒鳴りだした。
「拾えって言ってんだろ!」
大きな声に、つい体が強張ってしまう。
店内にいる客たちが怯えている。それに気が付いてしまえば、自分の中の反発心が勢いを失っていく。
不本意ではあるけれど、ひとまずここは従うべきかもしれない。
私はその場に両ひざをつけ、割れてしまったマグカップに手を伸ばす。
破片を摘み上げた瞬間、ガシリと上から頭を抑えられ、その拍子にちりっと指先が痛んだ。
「俺と対等だとでも思ってるのか?」
身体を起こそうとしても、逆に力で抑え込まれてしまう。
無理やり土下座させられているかのようなこの格好が屈辱で、悔しくて、たまらない。涙が浮かんでくる。
「お前自身に価値など全くな――くっ……」
カツリと靴音が鳴った。
視界の端に綺麗な黒の革靴を捉えた瞬間、私の頭を抑えていた力が苦しげな声と共に離れていった。
「じゃあお前にはどれほどの価値があるっていうんだ。笑わせんな」
聞こえた声に、鼓動が高鳴り出す。
ゆっくりと顔をあげれば、そこに遼がいた。