独占欲全開で、御曹司に略奪溺愛されてます


「ハッキリ言っておく。どれほど麻莉を欲しがろうとも、お前は彼女を手に入れることは出来ない。俺が手放さないから」


怒りに満ちた表情で、榊さんの胸倉を締め上げている。


「麻莉は俺の女だ。これ以上彼女を苦しめようものなら、ただじゃおかない。俺は全力でお前を潰しにかかる」


彼の目つきや低く響く声は、恐れを抱かせるほど鋭さを含んでいる。

それなのに、私を思って出た言葉はどれもが甘やかで、嬉しくて胸がきゅっと締め付けられた。


「……遼」


出張から戻るのは明日だったはずだ。帰りが早まる可能性があることも聞いていない。

嬉しさと戸惑いを抱くなか目が合えば、遼が榊さんを掴んでいた手から力を抜いた。


「こいつを店からつまみ出せ」

「承知いたしました」


遼が手を離すと同時に、音もなく現れた中條さんが榊さんの腕を捻り上げ、店長も榊さんの身体を押さえにかかった。


「痛ぇ! なんだよいきなり……おっ、お前。あの時の……いっ、痛いって言ってんだろ! 離せ!」

「うるさいです。静かにしていただけますか」


訴える声には耳を貸さず、中條さんは店長と共に榊さんを店の外へと追い立てていく。


「麻莉」


遼が私の肩にそっと手を乗せた。


「大丈夫か?」



< 114 / 220 >

この作品をシェア

pagetop