独占欲全開で、御曹司に略奪溺愛されてます
「ハッキリ言っておく。どれほど麻莉を欲しがろうとも、お前は彼女を手に入れることは出来ない。俺が手放さないから」
怒りに満ちた表情で、榊さんの胸倉を締め上げている。
「麻莉は俺の女だ。これ以上彼女を苦しめようものなら、ただじゃおかない。俺は全力でお前を潰しにかかる」
彼の目つきや低く響く声は、恐れを抱かせるほど鋭さを含んでいる。
それなのに、私を思って出た言葉はどれもが甘やかで、嬉しくて胸がきゅっと締め付けられた。
「……遼」
出張から戻るのは明日だったはずだ。帰りが早まる可能性があることも聞いていない。
嬉しさと戸惑いを抱くなか目が合えば、遼が榊さんを掴んでいた手から力を抜いた。
「こいつを店からつまみ出せ」
「承知いたしました」
遼が手を離すと同時に、音もなく現れた中條さんが榊さんの腕を捻り上げ、店長も榊さんの身体を押さえにかかった。
「痛ぇ! なんだよいきなり……おっ、お前。あの時の……いっ、痛いって言ってんだろ! 離せ!」
「うるさいです。静かにしていただけますか」
訴える声には耳を貸さず、中條さんは店長と共に榊さんを店の外へと追い立てていく。
「麻莉」
遼が私の肩にそっと手を乗せた。
「大丈夫か?」