独占欲全開で、御曹司に略奪溺愛されてます
「こちらの席でよろしいでしょうか。オーナー」
それは誰に向かっての言葉かと振り返り見て、私は目を見開いた。
店長が話かけているのは遼だった。
倉渕様でもなく、お客様でもなく、オーナー。
店長は確かにそう言った。
遠ざかっていく遼の大きな背中が、いつも以上に大きく見えた。
+ + +
「私も座って良いですか?」
店の奥に位置するテーブル席に、遼と中條さんは向かい合って座っていた。
経済誌を広げ読んでいた中條さんは私にどうぞという視線を送ってきて、遼はため息交じりに手にしていたスマホを内ポケットへと戻してから、「あぁ」と声を発する。
遼の隣に腰掛けると同時に、テーブルに料理が運ばれてきた。
ノートパソコンを閉じテーブルの脇へと追いやっている遼をアルバイトの女の子は興味津々に眺めつつ、「ごゆっくり」と含み笑いをこちらに向けてきた。
思わずしかめっ面になってしまう。
「これは麻莉のぶん」
遼はそう言いながら、パスタが盛られたお皿を私の前に置き直す。
突然のことに戸惑っていると、中條さんが雑誌を閉じた。
「ほら、言ったでしょう。その日の気分というものがあるのだから、食べるものくらいご自分で決めさせてあげるべきだと。お前は過保護な保護者か……あぁ失礼しました。言葉が過ぎました。反省します」