独占欲全開で、御曹司に略奪溺愛されてます
そっちが呼び出しておいて、その言い草はないだろうと頭にくるけれど、感情のまま言葉にしてしまえば、後が面倒くさいことになる。
「……すみません。遅くなりました」
背中を丸めながら頭を下げると、呆れたようにため息を吐かれた。謝罪に心を込めなかったのだから仕方がない。
「まぁいいわ。こっちに来なさい見せたいものがあるの」
「いったいなんですか?」
ダイニングテーブルに片手を置き、母が足を止めた。いいから来なさいと、目で主張してくる。
嫌な予感に足が竦んでしまう。誰かに助けを求めたくなり、思わず周囲を見回してしまったけれど、私の近くには斉木さんしかいなかった。
彼女は私と目を合わせることもなく、預けたバッグを抱え持ったまま、その場から後退していく。
逃げ出したくなる気持ちを奮い立たせつつ、私は母の元へと歩き出した。
途中、リビングの奥にある小上がりに人の姿があることに気が付いた。
和室になっているそこに、父と妹がテーブルを挟んで座っている。
妹は私と母のやりとりを面白がっているような顔でこちらを見ているけれど、父は違う。
テーブルに広げた新聞を、身動きもせずにじっと見つめていた。