独占欲全開で、御曹司に略奪溺愛されてます
微妙に目が泳いでいる。何と答えるのが正解かを考えているように、私には見えた。
遼はなかなか口を開かない。それならばもう一人、真実を知っているだろう人に聞くしかない。
遼から涼しげな顔でコーヒーを飲んでいる中條さんへと視線を移動させると、彼はやれやれと言った様子で小さく息を吐く。
「違いますね。おかげなどではなく、倉渕専務がそう仕向けたと言った方がより事実に近いかと」
「佳一郎。それ以上余計なこと喋るな」
「私は聞かれたから素直に事実を述べたまでです」
ちょっぴり焦っている遼と無表情のままの中條さんを交互に見てから、私は握りしめていたフォークをゆっくりおろしていく。
西沖グループを退社し、家も飛び出し、これからどうやって生きていこうかと悩んでいた時、友人である隅田君からちょうど知り合いの店が社員を募集していると話を持ち掛けられたのだ。
純粋に、隅田君の仕事繋がりでの知り合いだと思っていたが、どうやら違っていたらしい。
「そっか、遼だったんだ」
しかし理解してしまえば、今まで抱いていた違和感が納得へと変わっていく。
面接もそこそこにさらりと私の雇用が決定したことも、給料面での待遇が最初から良かったことも、すべて遼がしてくれたことなんだ。