独占欲全開で、御曹司に略奪溺愛されてます
記憶を辿っていると、もう一つの違和感へと繋がってしまった。
「それじゃあ。もしかして……私が今住んでるアパートも……もしかして遼が一枚噛んでたりする?」
あの物件も、隅田君から知り合いの不動産会社を紹介してもらったことが始まりだった。
まさかと思いながら恐る恐る問いかけると、遼が観念したように頷いた。私は唖然としてしまう。
「築浅なのに相場よりも家賃が安いから不思議に思ってたけど……まさか遼が大家だったなんて……全然気付かなかった……っていうか、遼いろいろすごい」
「いや。あの物件は俺の叔父さんのだから。俺は別に」
なんてことない口調で謙遜してきたけれど、例え物件が叔父さんのであっても、この店のオーナーであるという時点で、すでにすごい。
「ずいぶん警戒心のない方ですね。本当になんの疑問も抱かなかったのですか?」
中條さんは湯気の立ちのぼっているコーヒーを、熱さをまったく感じていないような顔で一口飲み、ソーサーへと静かにカップを戻した。
「見合いをぶち壊した日、家の場所を聞いていないのにあなたをしっかり家まで送り届けてしまったと、後日、倉渕専務が青い顔をしていましたよ。普通ならお前はストーカーかと疑うレベルです」