独占欲全開で、御曹司に略奪溺愛されてます
言われて初めて、そうだったと気付いた。
確かに場所を伝えていないのに、車はしっかり私の家にたどり着いていた。
しかし私はその時もその後もずっと、遼との甘い時間に夢中だったため、疑問にすら思うこともなく、そのまま記憶から抜け落ちてしまっていたのだ。
「良いんだよ。相手が俺だったから、麻莉も気にしなかっただけなんだから。な?」
頬杖をついた状態で、遼がわずかに首を傾け私に同意を求めてくる。
もちろんすぐに私は彼の言葉に頷き返した。
遼は私にとって警戒などする必要のない存在である。
そして感謝すべき存在でもある。
気づかぬところで、ずっと遼は私に力を貸してくれていた。
西沖の家を飛び出したあの時、後悔なんて全くしていなかったけれど、未来に対しての不安はたくさんあった。
けど、今こうしてひとりで楽しく生活を続けていられるのは、働ける場所があり、住む家があり、話を聞いてくれる友人たちがいてくれ、なにより、頼れる存在がすぐ傍にいたからだ。
今に始まったことではない。私が不安になっている時、さりげなくアドバイスをくれたり、手を差し伸べてくれたり、遼は学生の頃からずっとそうだったのだから。