独占欲全開で、御曹司に略奪溺愛されてます
「何か?」
「いえ。邪魔なのですぐに追い払いましたが、あなたの妹さんが出張先に何度か現れたので、個人的に気になっただけです」
「えっ!?」
思わず遼を見れば、彼はその綺麗な顔を少しだけ歪ませた。
「最初に言っておく。俺は麻莉とふたりならいくらでも食事に行く。が、彼女も同席するというなら、行かない」
「遼。何か言われたの?」
「……いや。ああいうタイプは苦手だってだけ」
遼はそうとしか言わなかったけれど、妹の性格を分かっているからこそ、何かあったことくらい簡単に察しがついた。
同時に、昔の記憶も蘇ってくる。
頭脳明晰で容姿端麗な遼は、学生の頃からものすごく目立っていた。
学年は違えど、もちろん妹も遼の事を知っていて、彼のことについて何度も聞かれたことがあった。
他の女の子同様、彼に憧れを抱いていたとしてもおかしくない。
そして今、遼が姉の私の恋人として目の前に現れたことで……妹のなかでまた違った感情が生まれていてもおかしくない。
私よりも優位に立ちたがる妹のことだ。
遼を私から奪いたい……もしかしたら、そんなことを思っているかもしれない。
考えれば考えるほど、不安になっていく。
無意識に膝の上でぎゅっと握りしめてしまっていた手に、彼の大きな手が乗せられた。
「麻莉」
優しく名を呼ばれ、胸がきゅっと苦しくなった。
胸を張って恋人だと言えるようになりたい。遼と本物の恋人になりたい。
彼の落ち着きある眼差しと、包み込む手の温もりを感じながら、私は強くそう思った。