独占欲全開で、御曹司に略奪溺愛されてます


「何か?」

「いえ。邪魔なのですぐに追い払いましたが、あなたの妹さんが出張先に何度か現れたので、個人的に気になっただけです」

「えっ!?」


思わず遼を見れば、彼はその綺麗な顔を少しだけ歪ませた。


「最初に言っておく。俺は麻莉とふたりならいくらでも食事に行く。が、彼女も同席するというなら、行かない」

「遼。何か言われたの?」

「……いや。ああいうタイプは苦手だってだけ」


遼はそうとしか言わなかったけれど、妹の性格を分かっているからこそ、何かあったことくらい簡単に察しがついた。

同時に、昔の記憶も蘇ってくる。

頭脳明晰で容姿端麗な遼は、学生の頃からものすごく目立っていた。

学年は違えど、もちろん妹も遼の事を知っていて、彼のことについて何度も聞かれたことがあった。

他の女の子同様、彼に憧れを抱いていたとしてもおかしくない。

そして今、遼が姉の私の恋人として目の前に現れたことで……妹のなかでまた違った感情が生まれていてもおかしくない。

私よりも優位に立ちたがる妹のことだ。

遼を私から奪いたい……もしかしたら、そんなことを思っているかもしれない。

考えれば考えるほど、不安になっていく。

無意識に膝の上でぎゅっと握りしめてしまっていた手に、彼の大きな手が乗せられた。


「麻莉」


優しく名を呼ばれ、胸がきゅっと苦しくなった。

胸を張って恋人だと言えるようになりたい。遼と本物の恋人になりたい。

彼の落ち着きある眼差しと、包み込む手の温もりを感じながら、私は強くそう思った。







< 125 / 220 >

この作品をシェア

pagetop