独占欲全開で、御曹司に略奪溺愛されてます
「できれば、西沖さんに持ってきてもらいたいと、指名されてしまったのだが……行くかい?」
何が起きているのか理解できていないような顔で店長が私に確認する。
ついさっき、榊さんのこともあったからか、これが良くないことの前触れのようにどうしても思えてしまう。
しかも私も指名だなんて、ますます怪しい。
「いったいどこに?」
緊張感を持って聞けば、店長がゆっくりとした動作で上を指さした。
つられて天井を見上げ五秒後、私はあっと声を上げる。
「も、もしかして。倉渕物産ですか?」
「あぁ。そうなんだが……」
届け先がわかり、ホッとする。
私を指名した理由も、届けるべき相手が遼だと言うのなら、すべて納得だ。何の問題もない。
逆に、ニヤリと笑った遼が頭に浮かんできてしまい、びっくりさせないでよと文句を言いたくなってしまう。
「良いですよ。時間を持て余していたところですし、私届けてきます」
ユニフォームに着替えようと、スタッフルームをうろうろし始めると、店長がもう一言情報を追加させる。
「良かった。それで届け先は、倉渕物産の社長室だからね」
「え? 社長室、ですか?」
「それじゃあ、よろしく頼むよ」
「えっ。待ってください店長っ……」