独占欲全開で、御曹司に略奪溺愛されてます

戸惑う私をこの場に残し、店長はそそくさとスタッフルームをあとにした。

コーヒーを届けろと私を指名してきたのは、倉渕専務ではなく倉渕代表取締役社長……遼の父親ということだろうか。

遼ではなく彼の父親に呼ばれたとなれば……理由を考えただけでも恐ろしくなってくる。

遼と私が付き合っているという話を聞き、大事な跡取り息子の相手が、いがみ合っている西沖の娘だと知って、怒り心頭かもしれない。

私はこれから何を言われるのだろうか。

自分のロッカーから取り出したユニフォームを胸元で抱きかかえながら、自分の身体がわずかに震えていることを感じる。

遼は私に何も言わなかったけれど、父親の耳に私たちの話が入っている時点で、もうすでに彼に迷惑をかけてしまっていることだろう。

自分の引き起こした事態が大きくなってしまう前に……彼とのあやふやな関係にきちんと終止符を打つべきだった。

今更の後悔に苛まれながら、私は息苦しく感じる胸元に手をあてる。

怖いけれど、逃げるわけにはいかない。

遼のためにも、自分のためにも、逃げちゃいけない。

そう自分に言い聞かせ、私はユニフォームを抱え持つ手に力を込めた。



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