独占欲全開で、御曹司に略奪溺愛されてます
やけに重く感じるコーヒー入りのポットと、カップなどを入れた店の紙袋を持って、エレベーターで28階まであがっていく。
重い足取りでエレベーターを降りると、冷めた声が私を迎えてくれた。
「遅かったですね。来ないのかと思い始めていた所です」
「中條さん」
目の前にある受付の隣に立っていた彼が、やれやれと言った様子で、こちらに向かって歩いてくる。
「社長がコーヒーをお待ちです」
「……はい」
やっぱり、届け先にいるのは遼ではなく、社長で間違いなさそうだ。
立ち上がり、恭しくお辞儀をしてきた受付の女性に軽く会釈しつつ、私は踵を返しさっさと歩き出した中條さんのあとに続いた。
「コーヒーじゃなくて、私に話があるんですよね?」
独り言のように囁きかけると、ほんの一瞬、中條さんが肩越しにこちらを見た。
「両方でしょうね。コーヒーも飲みたいし、あなたにも会っておきたい。社長はそうお考えなのでは?」
返ってきた言葉に、小さくため息をつく。
ガラス張りの壁の向こうには、たくさんのデスクが並んでいて、多くの社員が熱心な様子で働いている。
かつて働いていた西沖物産のオフィスフロアもこんな感じだったなと懐かしく思いつつ、このどこかにいるかもしれないと遼の姿を探してしまう。