独占欲全開で、御曹司に略奪溺愛されてます

私が来ていることは分かっているはずなのに、目すら合わせようとしない。

その態度が、なるべく関わりたくないという意志表示のように見えてしまえば、心の中に苛立ちが芽生えた。


「座って」


憮然としつつも言われた通り椅子に腰かけると、母が私の前に写真台紙のようなものを一冊置いた。

これはなに?……まるで……。

疑問と共に浮かんだ恐ろしいワードを、慌てて心の中で打ち消した。

微動だにせず真新しい表紙を見つめていると、母がこほんと咳払いした。


「あなたの、結婚相手よ」

「……えっ!?」


予感が的中してしまった。目の前のこれは“見合い写真”だったらしい。


「私の? 美紀(みき)の、じゃなくて?」


妹の名前を出せば、母にしかめっ面をされてしまった。


「言ったでしょ、あなたのだって。聞こえなかったの?」

「聞こえましたけど、ちょっと信じられなくて」


これは親が……というか主に母が、私のために用意したお見合いなのだろう。

呼び出された理由は理解したけれど、この事態を受け入れることはできるはずもない。

今現在付き合っている人はいないけれど、いずれは自分が心の底から望む相手と結婚できたらいいなと思っている。


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