独占欲全開で、御曹司に略奪溺愛されてます


「こちらです」


中條さんは私に声を掛けると同時に、通路の角を曲がった。

慌ててそれに続くと、すぐに目の前に社長室の大きな扉が現れた。

コンコンと中條さんがノックすれば、声を掛ける前に、扉が内側から開かれた。


「来たね。待っていたよ。さぁ中に入りなさい」


大企業の社長だから、私の父のように気難しそうな人かと考えていたけれど、そうではなかった。

髪は白髪交じりではあるが、口元に朗らかな笑みを浮かべていて、私を見つめるその表情はとてもはつらつとし、また余裕すら感じさせる。

いい年の重ね方をしてきたような、そんな印象だ。

遼のお父さんは私を室内に招き入れると、廊下の様子をうかがったあと、ぱたりと扉を閉めた。


「見つかってないだろうな」

「はい。ちょうど今、専務は上の階にいらっしゃるので」

「そうか。良かった」


ホッとしたような表情を浮かべてから、遼のお父さんが応接用のソファーにどかりと腰をおろした。

専務ということは、私を呼び寄せたことを遼は知らないということだ。

しかし、中條さんが言うには、上階のどこかにはいるらしい。

近くに彼がいることは間違いなく、ただそれだけで心強く感じてしまう。

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