独占欲全開で、御曹司に略奪溺愛されてます
「早速、コーヒーを飲ませていただけるかな?」
「あっ、はい! 今すぐ準備します!」
遼のお父さんは手の平を擦り合わせながら、ニコニコ顔で私を見ている。私もコーヒーを準備しながら、その様子をちらちら盗み見てしまう。
遼のお父さんを見るのは初めてだった。
とは言え、父や母が何度も噂話や嫌味を口にするため、遼のお父さんのことを勝手に知っている気になっていた。
けれどこんな風に笑顔を見せてくれる人だとは一ミリも思ってもいなく、自分の抱いていたイメージとはだいぶズレがあることを知る。
「あの。お砂糖とミルクは」
「ミルクを少々……あ、いや、砂糖も入れてもらおうかな。今日はそういう気分だ」
「分かりました」
父からよく、倉渕はいつ見ても偉そうにしていると聞かされていた、今のところ倉渕社長にそのような態度はみられない。
むしろ、ワクワクしながらコーヒーを待っている様子は……目上の人に対して失礼かもしれないけれど、とっても可愛らしく思えた。
緊張しながら置いたコーヒーのカップを、遼のお父さんは手に取り、口をつけた。
「熱っ」と言いながらも、続けてまた一口飲んでくれ、私はホッと息をつく。