独占欲全開で、御曹司に略奪溺愛されてます
しかし緊張まで和らげることはできなかった。
遼のお父さんが自分の近くに控えていた中條さんにちらりと目配せをすれば、中條さんはすぐに「何かありましたらお呼びください。失礼します」と社長室から出て行ってしまったからだ。
むしろ、二人っきりになってしまったことに緊張感が増していく。
コーヒーも無事に届け終えたし、私もこの場から退散したい。
逃げ腰になっていたのを見透かされていたのか、前触れもなく、遼のお父さんが話をし始めた。
「この前偶然、君のお父さんと道端で出くわしてね……」
父と会ったということに、苦々しい気持ちが体の中で広がっていく。
「うちの娘をたぶらかさないでもらいたいと、ひどく怒られてしまったよ」
「申し訳ございません!」
深く頭を下げる。ぎゅっと目を閉じ、そのまま動かずにいると、そっと肩に手を乗せられた。
「君を責めるつもりでここに呼んだんじゃない。顔をあげて……良かったら、その顔を私に見せてもらえないだろうか」
予期せぬことを言われ、私は戸惑いがちに顔をあげる。目の前に立っている遼のお父さんとすぐに目が合った。
じっと見つめ合い数秒後、遼のお父さんが表情を柔らかくさせた。