独占欲全開で、御曹司に略奪溺愛されてます
「まるで若いころに戻った気分だ。君は八重ちゃんによく似ている」
「……母を知っているんですか?」
「あぁ。君のお母さんと私はね、幼馴染だったんだよ」
遼のお父さんと私のお母さんが幼馴染だなんて、知らなかった。
物静かだった母本人からも、そして倉渕社長や息子の遼をあれほど敵視していた父からも、そんな話は一度も聞いたことがない。
母と遼のお父さんの関係をお父さんは知らなかったのだろうかとも考えたけれど、すぐにそれはないなと頭の中で否定する。
私を見つめる遼のお父さんの眼差しはものすごく温かい。
それはきっと、私を通して亡くなった母を見ているような気持ちだからだろう。
母ととても仲が良かったんだろうなと考えれば、逆に、父はふたりの関係を知っていてその上で口にしなかったのではないかと思えてくる。
父が遼のお父さんを敵視し続けている根底には、この三人に関する苦い思い出でもあるのではと変に勘ぐってしまう。
遼のお父さんは席に戻り、向かい側の席へと手を差し向けた。
「座ってくれ。君もコーヒーを飲んで、リラックスしてくれ」
「……有難うございます」